2022年 8月14日

胡桃の抽斗箱
★サイズ w390 d300 h500
★ 材料 本体:胡桃材 抽斗:国産桐
つまみ:ウォールナット・ローズウッド
★塗装 オイル+蜜蠟ワックス

S様が工房へお越しいただいたのは
2021年の秋のことでした。
お亡くなりになった母上様を偲ぶ想いを形にして
新盆にご親族の方皆様(14名)にお渡しする
抽斗箱のご依頼でした。
今回製作させていただいたのは、14個
一番お若い抽斗箱の所有者はなんと
3か月のひ孫になるということでした。
数はたくさんありますがその一つ一つが
それぞれのご親族のもとに旅立つわけですから
大切に心を込めて製作させていただきました。
今回は、いつでもこの抽斗箱がどのように作られたのか
ご覧いただけるように製作工程をご紹介いたします!

今回の抽斗箱製作にあたり原木丸太を製材しました。
こちらは板が乾燥が終わり工房に入荷した時のものです。
ここから製作が始まります。
①木取り 材料を抽斗箱の大きさにカットしてゆきます。

②板はぎ カットした板を必要な幅の板にするために
板をつないで接着します。
この時、一枚板のような美しい木目になるように
気を使いながら板剥ぎをします。

③加工 美しく仕上がった板を抽斗箱に必要な幅と長さに加工します。

④墨付け 抽斗箱の本体を組むために組み手のほぞの位置を
本体に毛引きでしるしをつけます。線が見えますね!

⑤ほぞ加工【蟻加工】墨付けした位置をのみを使って
ひとつひとつ手加工で掘ります。

⑥留め加工 蟻加工した二つの板を
斜め45度に接着するために機械でカットをします。

こちらが留め加工したもの

⑦組み立て 留形隠し蟻組接ぎ
無垢板同士を直角に接合するときに使う組み手の一つです。

天板と側板を組み立てると下の写真の角の部分です。
組んでしまうと中の組み手は見えませんが
強度は抜群です。
そして天板と側板の美しい木目がつながって見えますね!

⑧抽斗の製作 こちらは高級な国産桐
主に東北地方のものです。
抽斗に必要な大きさにカットした板の状態です。
桐材は、調湿効果、防虫効果に優れています。

⑨抽斗の組み立て 加工した桐材を使い木組みとボンドで
抽斗に組み立て真田紐をぐるぐる巻き
固定+圧着しながら乾かします。

⑩抽斗の仕込み
抽斗ができあがるといよいよ本体に合わせて
一つ一つカンナで削り本体にピタッと収まるように
調整をします。
木は気温湿度によって年間を通して伸縮するので
職人の技術と経験が必要とされる重要な仕事です。

⑪塗装 今回は胡桃の優しい木目と木肌を活かすために
天然オイルと蜜蝋ワックスにて丁寧に仕上げました。

⑫乾燥 塗装した部材をそれぞれ1~2週間乾燥させます。

⑬完成 本体は胡桃の木目を活かし抽斗の前板は
すっきりした柾目を使用しました
そうすることでつまみがより引き立ち美しく見えます。

つまみの種類は四種類
すべてオリジナルの手づくりしたものです。
ウォールナットとローズウッドを使用しました。
それぞれお好きなデザインをお選びいただきました。




こうして出来上がった抽斗箱は
それぞれのご親族のもとに旅立ってゆきました。
この抽斗箱は伝統的な技法を使い製作された
指物家具です。
木組みで製作したこの抽斗箱は永年にわたり
お使いいただけるお品物でございます。
どうぞ末永くご愛用いただければ幸いです。